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お墓の種類

近年のお墓事情は、土地の高騰や少子高齢化により多様化してきており、お墓について悩んでいる方も少なからずいらっしゃるようです。 お墓を建てる、建てない、の前に漠然としたお墓のイメージからもう少しだけアンテナを伸ばしてみて、基本的なお墓の石や形についてみていきましょう。

 

石の種類

まずはお墓のメインともいえるお墓の石=墓石(ぼせき、はかいし)についてみてみましょう。

現在墓石に使われる石の種類は外国産の石材を含めると何百種類にもなります。戦後、国産の石材は産出量が限られてきて、昭和40年以降墓石用の石材が本格的に輸入され始め、現在ではほとんどを外国産に頼っています。

少ない国産の方が高価、高級というイメージを持たれるかもしれませんが、一概にそうとも言えず、国産でも安価な石材もありますし、国産よりも高価な外国産の石材もあり、高価=良い石、安価=粗悪な石とも言い切れません。

 

良い石・悪い石

国産でも外国産であっても、共通していることがあります。それは墓石として良い石とは「硬くて水をなるべく吸わない石」ということです。

柔らかい石は水を吸いやすく、苔むしたり汚れが目立ってきたりします。端が崩れてきているお地蔵さまや 神社にある苔むした石灯籠を思い浮かべてもらえると良いでしょう。また、寒冷地では水分が凍結したり溶けたりを繰り返すうちに石にひびが入ってくることもあります。

お墓は長期間にわたって使用するものです。例え、高価で良い石だと言われても、その土地に合っていなければひび割れてきてしまったりして、挙句には悪い石をつかまされた、だまされた、という印象になってしまいます。

石は重くて輸送が困難なために使う場所の近くで産出された石材が多く使われてきましたので、先のようなミスマッチは起こりにくかったのですが、産出量の減少や輸送技術の発展などにより、良くも悪くも判断が難しくなってきています。

かつては加工しやすい柔らかい石が使われていましたが、現在は加工技術が発達して、国産外国産を問わず硬い石が墓石に多く使われるようになっています。

現在、主に墓石として使用されている石は「御影石(みかげいし)」という種類で、耳にしたことがあるかもしれません。鉱石名は「花崗岩(かこうがん)」という種類なのですが、兵庫県神戸市の御影(みかげ)地区が産地であることから御影石と呼ばれるようになりました。御影石は硬質で吸水性が低く、磨くと光沢がでることから墓石の主流となっています

 

墓石の形

次に、墓石の形=デザインについて、みてみましょう。 お墓のデザインの種類には大きく分けて「和型」と「洋型」の2種類があります。その他には「塔型」や「自然石型」などがあります。

 

和型

和型はごく一般的な、古くからあるお墓の形のものです。
台石(だいいし)と呼ばれる土台の石の上に角柱型の石が乗っているタイプです。角柱も細かく見ていくと、てっぺん部分が平らで角が丸めてあるもの(2方丸型=にほうまるがた)や、とがっているもの(角兜巾型=ときんがた)頂頭部が飛び出ているもの(香箱型=こうばこがた)などがあります。

 

洋型

近年増えてきたタイプです。
もともとは明治時代の外国人墓地の墓石形式から派生したものといわれていますが、公園墓地や大規模霊園が多く開発されてきて、外国人墓地風のイメージを取り入れるところが多く、必然的に墓石も洋型が多くなったようです。
洋型にも種類があって、四角い平型、斜めになっている台形のようなオルガン型があります。 台石を数段にするといった和洋折衷型も多くあります。
この洋型の登場により今まで使われなかった赤茶色などの石材が使われるようになったり、個性的な形状をしたものが「デザイン墓石」と言われ、建立されるようになりました。

 

まとめ

墓石の種類や形についてみてきましたが、結局どんなお墓が良いの?という疑問に戻ります。 外国産の輸入量が増えたということは、石の種類も増えます。今までにないキラキラした石(結晶)や粒の粗さも様々で、墓石の色や形を楽しんで選べるようにもなりました。
また、高齢になってきたご両親がお墓参りしやすいようにと外柵にベンチを設置したり、掃除しやすいように墓石の高さを低めにしたりすることもできるようになりました。
先にも述べましたが、お墓は長期間にわたって使用するもので、手入れもそれなりに必要です。好みの石やデザインがその土地の気候や地質に適しているか、よく理解している業者に相談をしてからでも遅くはありません。
そのうえで、親族が気持ちよくお墓参りができて、ご先祖さまのことを想うことができるお墓として「墓石の前に立った時、一番和む」と思った石を選んで建てたお墓が一番良いお墓といえます。

【参考文献】
「墓地墓石大辞典」  墓地墓石研究会著(雄山閣発行)
「日本人として心が豊かになるお墓のしきたり」  藤井 正雄監修(青志社発行)

文責 矢田 敏起

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お彼岸と墓

日本の風習の一つに「お彼岸」があります。お墓参りをされるご家庭もあるかと思いますが、なんとなくわかっているつもりで過ごしていますが、この機会に振り返ってみようと思います。

風習としてのお彼岸

お彼岸(彼岸)は以下のように定義されています。

『春分、秋分を中日としてその前後おのおの3日にわたる1週間を〈お彼岸〉と称し,この期間に寺院では彼岸会という法会を行い,信者は寺に参詣し,説法を聴聞,また墓参などをする。このような習俗はインド,中国にもみられず,日本にしかない。(以下略)』(※1)

 

<図 彼岸>

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日本にしか見られない習俗というのは意外でしたが、まずはこの定義に出てくる言葉をひとつずつ分解していきます。

 

春分の日(しゅんぶんのひ)と秋分の日(しゅうぶんのひ)

上記の定義から、お彼岸は春分と秋分がキーになっていることが読み取れます。
春分の日、秋分の日は昼と夜が同じ長さの日のことで、毎年同じ日になるとは限らないことはご承知のとおりです。しかし、昼と夜とが同じ長さの日だからというだけで休日になっているわけではなく、それぞれにルールがきちんとあって春分の日、秋分の日は存在しています。

まず、昼と夜が同じ日というのは国立天文台(※2)が「来年はXX日」と推算した日が元になっています。(※3)

そして、国民の祝日に関する法律(第二条)では

『春分の日 春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。』
『秋分の日 秋分日 祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。』
と定められています。(※4)

 

お彼岸は風習の一つでありながら、国立天文台と法律によって成り立っているという側面もあります。

 

「彼岸」という言葉

風習としてのお彼岸はわかりましたが、「彼岸」という言葉は何なのか、なぜ「お彼岸」という風習になったのか、見ていきます。

 

彼岸の由来

「彼岸」とは一言でいうと「あの世」のことです。反対に現世、つまり「この世」のことは「此岸(しがん)」と言います。
また、死ぬことを「西に旅立つ」と例えるのは、彼岸は西、此岸は東とされているためです。
中日は太陽が真東から昇って真西に沈む日のことですから、

あの世とこの世が一直線につながる

あの世とこの世が一番近い日

ご先祖さま(なくなった人)に一番近い日

ご先祖さまに会いに行く

ご先祖さまがいるお墓にお参りにいく

 

というふうにつながって、「お彼岸」という風習になっています。
ちなみに、「お盆」は先祖の霊を家に迎えて供養する風習で、同じ供養でも、お彼岸はこちらから出向きますが、お盆はご先祖さまを呼ぶという違いがあります。

 

お墓とご先祖さま

冒頭でありました「お彼岸は日本にしかない風習」には諸説ありますが、四季の移ろいがはっきりしているからという説や、日本の「祖霊信仰(それいしんこう)」によるものだという説などがあります。

祖霊とはご先祖さまの霊、ご先祖さまのことですので、ご先祖さまを敬う、大切にする信仰で、東アジアの定住型農耕系地域に多く見られます。いろいろな手続き(供養や年忌)を経て祖霊と親しい関係になることが特徴で、そのためには先祖代々という連続性が必要になってきます。

とりわけ日本では江戸後期の都市部の人口集中による土地事情と、明治へと続く強い家制度により「代々の墓」という共同の墓がご先祖さまの住んでいる場所として祖霊信仰とともにお墓が大切にされてきました。

 

まとめ

お墓や墓地のあり方、価値観が大きく変わってきているといわれていますが、かつての家制度が変わってきていることを見聞きすると、うなずける部分もあります。
それでも先祖がいたから今の私たちが存在できている、そのご先祖さまがいるお墓を大切にするという日本のさまざまな風習は季節の移ろいが感じられる良い風習だと思います。

 

【参考文献】
「神さま・仏さま・ご先祖さま」 神崎 宜武著(小学館)
「おうちで楽しむにほんの行事」広田 千悦子著(技術評論社)

※1・・・世界大百科事典 第2版より:https://kotobank.jp
※2・・・正式名は「自然科学研究機構 国立天文台」
※3・・・『歴要項には推算した翌年の暦(国民の祝日、日曜表、二十四節気および雑節、朔弦望、東京の日出入、日食・月食など)を掲載している「暦要項(れきようこう)」が官報に掲載されることによって、正式決定となります。』(自然科学研究機構 国立天文台より:http://www.nao.ac.jp)
※4・・・総務省行政管理局 法令検索より:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO178.html

 

===メモ(言葉の違いについて)===
引用を除いて「風習」に統一しています。(以下コトバンクより:https://kotobank.jp)
風習・・・その地域社会で,人々が長年にわたって伝えてきた生活や行事の独特のならわし。しきたり。風俗習慣。(大辞林 第三版)
慣習・・・一定の社会が共有する行動様式の全体をいう。習慣や文化,民俗・習俗などと類似する概念であるが,習慣がやや個人的な行動様式をさす傾向が強いのに対して,慣習は集団成員が共有する意味合いが強い。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
習俗・・・ある地域やある社会で昔から伝わっているfや習慣。風習。ならわし。(デジタル大辞泉)

 

ご先祖さまとご先祖様について
祖霊信仰は祖霊と親しくなる信仰ですので、「さま」と平仮名での表記に統一しています。

文責 矢田 敏起